四姑娘山自然保護地区概要 

 四姑娘山(主峰6250m)は中国西南部の北緯31度・東経103度付近の中国四川省アバ藏族羌族自治州小金県日隆鎮に在ります。四姑娘山は遺伝子の宝庫と言われる横断山脈の東部に位置します。チベット文化圏の東端でも有ります。同じチベット文化圏で有りながら水と緑に恵まれたこの地域は西部や中部のチベットとは異なった豊かで優しい印象を与えます。この地域に1000年以上前から多くのチベット族が住んでいます。主な生活基盤は牧畜と農業です。彼らの生活形態とこの地形が調和して美しい自然を形成しています。

 成都から日隆までは公共バスで7時間で、小型車や高速道路を利用すれば4時間です。東京や大阪から四川省の成都までは定期の直行便で5時間です。日隆には多くのホテルや宿が有ります。

 四姑娘山自然保護区は海子溝、長坪溝、双橋溝、巴郎山を含みます。海抜高度は3000mから6250mで面積は1375平方qです。ここはパンダが生息する臥龍自然保護区の西側に隣接します。中生代の造山運動と新生代の火山や氷河の活動によって急峻で複雑な地形を形成しました。懸垂氷河や氷床が現在も残り、山上の海子*が多い所です。狭い地域に温帯、寒帯、永久積雪帯の3つの気候帯が同居しています。降水量が多く年間1000mm前後です。ここに山や谷や湿地や海子や森林や草原が分布して多種多様な植物が生育し野生動物が生息しています。 *海子=湖沼のこと下記のウエブサイト "蜀山女神" に四姑娘山の写真が有ります。



Marmota himalayana / Hymalayan Marmot

Meconopsis simplicifolia / Blue-poppy

Sinopodophyllum hexandrum

野生植物について

 四姑娘山は多種多様な植物を観察できる地域です。ブルーポピーや他の美しい花や珍しい花が沢山咲きます。エーデルワイスの類は雑草のように咲き誇ります。蘭やユリの仲間、薬用植物も多く見られます。

 4月末から桜草の仲間が咲き始め、10月まで多くの種類の花が咲きます。石楠花は5月から6月、大きな桃色の花を咲かせるSinopodophyllum hexandrumは5月末から6月、四姑娘山を代表するブルーポピーは6月下旬から8月中旬に掛けてあちこちで咲きます。

 四姑娘山自然保護地区内の、長坪溝と双橋溝には針葉樹と広葉樹の混合林が多く有ります。長坪溝では山桜の一種が6月にあちこちで咲き8月に実が熟します。9月末が紅葉、10月後半が黄葉のピークです。
注)ブルーポピーの仲間で花が黄色い種は4月末から7月中旬まで、あち  こちで沢山咲きます。
  隣接している夾金山森林保護区でも同様な植物を観察できます。




■ 野生動物について

 野生動物は四姑娘山自然保護区と隣接地域の間を往来しています。臥龍自然保護区の深部に隣接する長坪溝上流に野生動物が比較的多く居ます。野生動物では有りませんがヤクは至る所で見られます。

<低地(〜4300m前後)の野生動物>

谷間の草地や森林に生息する野生動物です。人が容易に接近できる場所で大型の獣は殆ど居ません。

20年前には熊や鹿が居ましたが、現在は殆ど見られません。雪猪(ヒマラヤ・マーモット)は多く居ます。稀に土猪子やイタチの類を観察できます。リスや鼠の類は多く居ます。鳥類は多く居ます。血雉は四姑娘山を代表する美しい鳥です。蝶やトンボ等の昆虫類も多く居ます。蛙やトカゲなどの小型の両生類や爬虫類は多く居ます。魚類は小型の裸鯉の仲間が居ます。

<高地(4300m前後〜)の野生動物>

 山上の岩場や草地に生息する野生動物です。人が容易に接近できない場所です。
 岩羊は四姑娘山を代表する獣で、夏の間4300m以上の岩場や隣接する草地に生息します。冬は積雪のため4000m前後の草地に生息します。長坪溝と海子溝に生息する岩羊の総数は500頭前後です。雪猪は多く居ます。雷鳥の類も多く居て時々山上の海子で子育てを観察できます。稀に元首絹蝶などの高山蝶を観察できます。 (次号は、四姑娘山自然保護地区の楽しみ方を紹介 )